床暖房

建築家の自邸VOL 40(見学会前の試運転)

今週初めに床暖ボイラー設置と試運転に立ち会った。
久しぶりの本格的雨だった。この現場になってから、
久しぶりの雨だ。台風並みの風が吹いたが、
雨のかからないところの作業だったので、事なきを得た。

Blg030907a夕方までヘッダー組み込み作業に時間がかかって、お湯を回し始めたのは午後6時過ぎになった。
写真はヘッダーの様子。

Blg030907b蓄熱式は立ち上がりに時間がかかり、しかも初めてとなれば、モルタルが冷え切っているので、確認できるまで相当時間がかかると覚悟した。

ところが予想以上に温まりがはやく、9時には床温度で4度上昇確認できて、最終電車で東京に帰ることができた。

さあ、明日から二日間床暖房体感見学会が始まる。
現場はいつでも見たい人がいれば案内する状態だけど、
なかなかそうは言っても、遠慮されてしまう。

今回のような機会に、興味のある人は気楽に立ち寄って
もらいたいな。

小さい家なので、時間もかからないだろう。
床暖房の資料をそろえてありますから、質問してくださいね。
もちろんSE構法の資料も整え、「建築工房わたなべ」社長が
詳しく説明してくれるでしょう。
社長は、SE構法のプロフェッショナルですから。

床暖房とSE構法が説明のメインだけど、忘れてならないのが、
家そのものが見所満載ってこと。

●建築家の設計とはいかなるものか?
●何処にこだわったのか?苦労した点は?
●他の作品とは違うのか?
など、自邸ならではのお話もできるでしょう。

工事途中だからこそ、現場主義の私の「家づくり」の一端を
感じてもらえれば幸いです。
工務店「建築工房わたなべ」ともども、お待ちしております。

現場見学会
3月10日(土)・11日(日) AM 10:00~PM 4:30
「重量木骨の家」蓄熱式床暖房体感会のご案内

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建築家の自邸VOL 38(蓄熱式温水床暖房のコスト)

長らく床暖房について書いてきましたが、一番皆さんが気になる
のは、一体いくらかかって、月にどの位かかるのよ!
ってことだと思う。

省エネだとか、ローコストとかいっていて、ホントはどうなの?
とよく言われる。具体的数字をこういうブログでは言いたくない
のが本音だが、自邸って言うことで、施主に迷惑かからない
という事で公開しましょう。

今回の床暖房設備工事費はざっと120万ってところです。
内訳はボイラー20万、材料、工賃、出張費、機器類など100万。
ボイラーは熱源や容量によって違うし、場合によっては給湯兼用
にして、本体工事費にまわすなんてこともあるけど、
今回の場合は、灯油の温水暖房専用10000kcsl/hレベルを
別途に用意した。
ボイラーを別にして100万位だと思ってもらうといい。

そのほかに建築的にモルタル下地や断熱材を敷くなんて工事
あるのだけれど、多かれ少なかれ、床暖しなくても建築で
床下地作ったり断熱するので、今回はそこまで説明はしません。

え!120万もかかるの?と思われただろう。
見学会でもこの話しすると、この数字聞いて、やっぱり床暖房は
高いんだ~って事で、終わってしまう。

さて、そこで良く考えてみてください。この方式、一体どれだけ
の面積を暖めているとお考えでしょうか?いや体積を。
1階部分、物入れ以外すべての床を網羅し、ざっと25坪50畳
分であり、しかも2階にも効果がある、全館暖房である。

10畳の居間に6畳分の一般的な暖房パネル敷きました
って言う値段と比較されては、確かに分が悪い。
でも、それって実際は床暖は補助でエアコンつけてませんか?

しかし、パネル式で全館暖房試みて(実際は不可能)と
ガスメーカーに見積もり依頼すると、びっくりするような金額が
出てくるから、専門家ならこれが安いということがわかるだろう。

とはいえ、床暖は居間だけでいいんです。という人には向かない。
全館暖房(床暖のあるべき姿)したいという人にとっては、
かなりお買い得な話だと思いますが、面積が小さいと割高に
なりますから、オススメしません。

述べ床40~60坪くらいの家で、最低でも2系統15坪30畳分
くらいからでしょう。
80万~120万くらいの範囲で出費できる人にオススメします。

もっと気になるのは、月の燃費でしょう。
床暖房にしたら月に電気代が8万もかかったなんていう、極端な
例がいくらでもあるから、おっかない。
最近は深夜電力を利用した方法もあるので、電気床暖は高いとも
いえないが、この場合は、確実に蓄熱式にしないとだめですよ。

灯油が高くなったといっても、燃料としてはいまだに最安。
大まかには灯油と深夜電力はほぼ同等レベルのようだが、一時
灯油1に対して都市ガス2倍、プロパンガス3倍、
電気5倍と言われていた。

というわけで、オール電化にこだわらず、タンク置ける敷地が
あれば、灯油ボイラーをオススメしている。
この灯油、200リットルのタンクを設置するのだが、
給湯、お風呂のボイラーもこのタンクにつなげる。
大体、およそ1ヶ月で200リットル使う勘定で、
床暖分としては半分から3分の2くらいだろう。
過去の住宅からすると、100~150リットル位が燃費となる。

ボイラーの能力からしても、10000kcsl/hあたりで一日
7時間回して、30日分とすると、約280リットル消費する事
になるが、低温で循環して、7時間ずっと最大燃焼するわけじゃ
ないので、半分くらいの消費でいいと判断できる。

正確にはこの自邸でデータとっていこうと思っているが、
大雑把に言えば、50畳暖めるのに、一ヶ月8000円~12000
(灯油80円/Lとして)くらいの燃費だと考えている。
何度も言うようだけど、居間と寝室の二部屋の暖房費じゃない
ですよ。

もちろん地域の気温差や使う人の体感温度差で違うので、
目安としてこの位としかいえないが、建物が高気密高断熱化して
きているので、この蓄熱式床暖房の省エネ化はますます進んで
いる。ダイレクトゲインが見込めるプランであれば、
さらに省エネになる事でしょう。

ファンヒーター数個やエアコンの冬の光熱費を考えてもらえば、
安いか高いか判断できるでしょう。

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建築家の自邸VOL 37(蓄熱式温水床暖房 モルタル埋設工事編)

配管工事が終わると、次の日にでもモルタルで配管を埋めます。
配管が露出している状態が続くと、傷つける可能性が高くなる
ので、早めに保護する意味で、床暖工事と共に、段取りをしてお
きます。

蓄熱式というものは、熱を一旦どこかに蓄熱することを意味しま
す。私の場合は、モルタルに蓄熱させる方法をとります。
モルタルとは、コンクリートの石が入ってないものと思えばいい
でしょう。水と砂とセメントでできています。

最近は、基礎暖房といって、基礎コンクリートの鉄筋に、配管を
縛り付け、基礎を打つときに一緒に埋めてしまい、基礎自体を
蓄熱媒体にしているものがあります。

確かに、コストがかからず、一石二鳥かもしれませんが、
鉄筋に接触するのは構造としてどうなの?もしトラブッタラ基礎
壊すの?コンクリートでは尖った砕石が混ざっているので、
配管を万が一傷つけないか?等、私には怖くて挑戦できません。

Blg021207a 私は、基礎耐圧盤の上に、断熱材50ミリを敷き、その上に配管をモルタルで埋設する方法をとっています。その際、経験上、モルタルは、70ミリ前後が丁度いい厚みです。薄すぎては蓄熱されないし、厚すぎても表面が暖まらない。
Blg021207b こうしたことからも基礎暖房はコンクリートが厚すぎると思うんだけどな~。

さて問題は、このモルタル下地に直接仕上げをするか、一旦床下空間を作って、空気に伝達させるかの2種類があります。

Blg021207c 私は直接床仕上げをします。その理由は、直接床が暖かい方が、心地よいという単純な発想と、ダイレクトゲインが見込めるからです。ダイレクトゲインとは、窓から射しこむ太陽光(赤外線)が直接モルタルを暖める事で、熱を蓄熱する現象です。一旦床下空間があると、それは望めません。

では、いい事づくめかと言うと、やはり問題があります。
ですから2種類に分かれるところです。

直接仕上げの問題点は、ずばり床材料にあります。
メーカーで床暖対応の床として、フローリング、ムク板、
いろいろ出ているのですが、それはほとんどが一般的パネル式
のもの。モルタル蓄熱に対しては研究されていません。

過去、床暖房にトラブルはなかったといいましたが、
それは、配管や設備絡みの事で、この床材料に対しては、
何度か痛い目にあいました。
メーカーが10年実績あるから大丈夫と言った商品でさえ、
だめだったことがあります。その原因はモルタル蓄熱の特性を
メーカーが知らない事にあります。

詳しく書くとメーカー批判になってしまいますが、
私は床暖房材料に関しては、メーカーの言うことを信用して
いません。自分で確認できた材料しか、安心できないのが、
現状です。

それこそがこの方式の一番の欠点ですが、
現状で推奨できる床材料は、ずばり言ってコルクタイルです。
しかも無塗装のワックス仕上げタイプです。天然素材で素足でも
気持ちよく、水にも強く、扱いやすい。これ以上の最適材料は見
つかっていません。
極端に言うと、コルクタイルが大嫌いの人には、この床暖房を
勧めませんでした。

しかし今度は、コルクタイルにする為の問題が発生します。
コルクは5ミリが一番良く(厚いと断熱になってしまうため)
材料が薄いので、床下地の仕上げに凄く注意が必要です。

左官屋の腕がものすごく試される、厄介な施工なのです。
このことにもいろいろ研究してきました。

そこで最近はタイル床(石でも可能)を試すようになりました。
今回の自邸でも3分の1くらいはタイル張りです。
意外に思うかもしれませんが、蓄熱式床暖房とタイルは相性が
いいんです。室内プール周りの床を考えてみてください。
冬でも暖かいでしょう。温水式床暖房がなされているはずです。

最近の若い人は、西欧のようなタイル床にあこがれています。
これからは、ますます床暖房のタイル床仕上げは増えるでしょう。

こうした長所短所を持ち合わせているのが、蓄熱式床暖房です。
ご自分のライフスタイルや好みを考慮して、選択する事が
一番でしょう。

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建築家の自邸VOL 36(蓄熱式温水床暖房 配管工事編)

前置きが長すぎたかな。
お待たせしました、配管の工事の様子を説明しましょう。
床暖工事のメイン工事です。

東京より業者がやってきて、配管敷設をします。
現場に来たところで、まずは家具の場所と配管経路について
の打合せ。自邸では、ほとんど造り付家具で、置家具がない
ので、キッチンの場所だけ、床にマジックで印します。
物入や造作家具は、固定用の土台があるので、ひと目で場所が
わかります。

配管経路上に、扉の敷居止め土台(構造上のものではない)が
あるところは、大工さんに切り欠いて貰います。

この設計で一番気をつけることは、モルタル埋設後、配管を傷つ
けない事です。傷つける最大の要因は、後日、釘等を床に打ち込
むことです。モルタル埋設後は配管が見えないので、床にアン
カーしたり、釘を打ちこんだ時に、丁度配管があって、傷つける
ことがないとはいえません。

私が勤めていた当時、一度おきたことがあります。床暖の事情
を知らない大工さんが、設計とは違う床に釘を打ち込み、配管に
穴を開けてしまいました。その場所を見つけるのに、大変苦労し
ました。モルタルで5cmくらい保護されているので、通常では
ありえないことですが、実際には起きました。

それから、私はこの事を教訓にして、絶対に間違って釘を打ち
込まない設計を考えてきました。独立後も研究を重ね、現在に到
っています。間取りと配管経路、土台収まりは一体で、設計しま
す。そのおかげで、床暖房配管について、トラブルになったこと
はありません。

さて、設計図に従って配管するのでありますが、現場では調整が
いるので、トイレと便器の位置や、気をつける箇所を指示します。

Blg021007a まずは個室2部屋から敷き始める。こちらは母と祖母の寝室でトイレと同系統にしました。理由は祖母が早朝トイレに行くからです。

最初のお湯は、奥まった部屋の方を回す。そして窓が大きい太陽光が良く入るほうの部屋に続くという配管順路にしました。

Blg021007b場合によっては、現場で相談して配管順路を変更することも あります。お湯の流れを意識して、バランスよく循環経路を考えることが、重要なのです。


「床暖配管されているけど、この部屋ちっとも、暖まらない」なんて声がある時は、こうした順路を考慮していないために起こる場合があります。

Blg021007c 次に、台所、食卓、洗面所の系統に入る。
Blg021007d 洗面所、浴室が、予想以上に配管長さを使い、最後の配管が微妙になってきた。前述したように、配管は120mがMAXで、ヘッダーまで届かなかったら、アウトだ。



地下にあるので、少し余裕を持たせなければならず、職人と相談した。Blg021007e 南側テラス戸の部分の一本だけ間隔を広げる事にした。15cm間隔を20cmにしたわけだが、15cm間隔だと往復しなければならず、20cm間隔なら片道でよいので、6m分稼げた。




最終的に2mあまっただけ(つまり118m使った)のぎりぎりだった。こんな事は初めてで、通常は10m以上余裕を持たす設計なのだが、ついつい自邸で無理してしまったか。

こういう事があるので、オリジナル温水配管は、設計者が
工事に立ち会わないといけない。

Blg021007f3系統めは、一段下がっている居間の部分だ。ここも順路に、あらかじめ、基礎打ちの時に、CD管を入れておいた。つまり、この系統はCD管のトンネルを計4箇所通ることになり、良く考えて敷設しないと、めんどうな事になる。

Blg021007gつまり一筆書きの管のはじめと終わりと、途中でもトンネルを通すことになるので、片方からはじめると、トンネルの中の管を何度も引張ることになる。

そこで、往復の分岐点(全体の中間点)から敷き始めることにして、進めた。Blg021007h








小さい住宅であるが、3系統とも、経験者でないと難しい、
過去のノウハウを駆使した設計といえる。
工事自体は、人数もいて一日で終わった。
これも段取りがうまくいった結果である

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建築家の自邸VOL 35(蓄熱式温水床暖房工事準備編)

床暖房配管工事を行う前に、下準備がいくつかあります。
今回は、ヘッダーが地下(法規上の)物置内にあり、
1階床下から6本(3系統)のポリブデン菅を持ってくる
ルートを確保する必要があった。

通常は1階にボイラーとヘッダーを配置するので
めったにこのようなケースはないけど、自邸なので、
いろいろと試してみたかったという部分もあるかな。

こうした場合、一般的にはパイプスペースを用意し、
まとめて上階に出すのだろうけど、私は違う方式を
取った。ヘッダーから上階床に出るときは、3系統が
それぞれの方向に出て行くようにしたかった。

昨年完成した茨城の混構造住宅で、
RCと木造のエキスパンション部分を床暖配管が通過する時に、
配管をぶらぶらさせて、地震等の揺れに対応しようと考えた。
その方法を応用する事にした。

それは、電気線をコンクリート内に埋設する時に使うCD管
をルート上に埋設して、床暖配管時にポリブデン管をCD管
の中に通すという方法です。ようは先にトンネルを作っておく
ということですね。
当然、CD管はポリブデン管より大きなサイズを入れます。

Blg020707aここで問題発生。CD管を入れる時期は、床暖配管工事よりはるか前の出来事。車庫コンクリート打ちのタイミングです。通常は床暖房業者が埋設する事なのだが、業者は東京、それだけのために来てもらうのも悪いので、電気屋にお願いすることにした。
(というよりこの時点では床暖設計も契約もしてなかったん
だよね、自邸で油断したなあ。)電気屋さんありがとう。

Blg020707dかくして、床暖配管経路を想像しながら、現場で指示して埋設した。配管通す時、きついところもあったけど、無事通過した。この方法は今後も威力を発揮しそうだ。
写真は、CD管設置時と配管して地下に出した時。

Blg020707c 床暖工事の日程が段取られると、現場では、基礎土間コン上に、厚さ50ミリのポリスチレンフォーム(板状の断熱材)を敷く。余談だが、私が独立した頃は、大工さんがやってなくて、
施主と2人で夜中に敷いた事があったっけなあ。

Blg020707b_1 断熱材の上には、150ミリピッチの金網を敷く。これは、配管を固定するためと、配管の敷込み目安とするためである。Blg020707e 配管が150ミリ間隔なので、金網はピッチが通るようにきれいに敷いてもらわなければいけない。こうした細かいことが大事なのです。これら準備を整えて、床暖房業者が東京からやって来るのを待つわけです。




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建築家の自邸VOL 34(蓄熱式温水床暖房の設計3)

床暖房について詳しくない人には、蓄熱式の意味が
わからないことだと思います。
そこで、まずは暖房というものを簡単に説明しましょう。
人が暖を採る為の方式として、3つに分けてみました。

①接触型(直接伝導)コタツ、ホットカーペット、カイロ等
②対流型(空気を暖め、対流により熱を伝える)ファンヒーター、
エアコン、ストーブ等
③輻射型(赤外線の輻射によって、人体に熱が吸収される)
蓄熱式床暖房、薪ストーブ輻射式、オイルヒーター等 

人が暖かさを気持ち良く感じるのは、太陽光に当たっている時
だと思います。太陽が発する赤外線が、人体に自然に吸収され
るからです。ですから、暖房方式も③輻射型が理想的と言えるで
しょう。

そして蓄熱式では、低い温水温度でも床を暖めることができ、
その床温度が、人体に最も吸収のよい遠赤外線(低温輻射熱)を
放射させるのです。ここに蓄熱式の床暖房にこだわる理由があり
ます。

一般的な床暖パネル式では菅が細いため、湯温が高く、
①接触型のホットカーペットと大差ないものもありますから、
床暖房と一言でいっても、心地よさはまったく違うのです。

このことを頭に入れてもらい、本システムの制御、使い方を
説明します。

基本的に、ボイラー、ヘッダー(系統別に分岐するための回路)
配管、制御装置(室内センサー)が床暖房設備工事です。
埋設するためのモルタルは建築工事となります。
いわば、設備と建築が一体となったシステムですから、
個々の住宅で、そこに合った設計をしていく事になります。

制御というのは、お湯を循環させる時間を決めることで、
それが使い方になる、いたってシンプルな考えです。

生活する人の温度差や地域で多少違うのですが、一般的レベルで
具体的に申し上げると、タイマー付き室内センサーを
感知したい空間に設置し、たとえば6時起床の家なら、
5時から動くように設定します。およそ4時間、9時まで動か
します。循環を止めても、蓄熱された熱は、長時間もちます。

日中は気温が上がるため、動かしません。夕方寒くなってくる
午後4時から午後8時まで4時間動かします。
その後、止めると明け方まで徐々に温度が下がっていき、
朝になります。大体一日、7~8時間稼動させます。
そして、また一日が始まる。これを冬の間中繰り返します。
冬の間、家の中は一定の温度範囲を保っているというわけです。
部分的に部屋を暖めるより、全館暖房の方が効率的になります。

この制御はセンサーが付いていますので、室内温度の設定により、
タイマー設定時間内でも、設定温度になれば自動的に止まります。

配管に循環する湯温は45~50度ほどです。これは各種ボイラー
の最低温度設定です。ですから、かなり低い温度と言っていい
でしょう。この湯温はボイラーの燃費に貢献します。
ポリブデン菅の寿命が、一日12時間稼動で、温度60度なら
920年、90度になると36年という試算も出ています。
湯温が低ければ、菅の寿命にはまったく問題ないでしょう。

温度が低くて温まるのかという疑問も出ることでしょう。
遠赤外線は、室温が18度であっても、暖かく感じます。
室温が20度くらいでも、十分快適な暮らしになるのです。
これこそが、赤外線効果で、省エネルギーに貢献します。

しかも、ダイレクトゲインといって、日中の太陽光が床の
モルタル下地に蓄熱されるため、湯を循環させなくても、
自然に熱が蓄熱されるのです。(冬の縁側みたいな陽だまりを
作るのがベスト)

冬にだけ着目していますが、モルタル下地は夏にはひんやりして、
夏にも貢献するという、おまけみたいな話があります。

今回の母の家では、祖母が明け方トイレに行くので、
トイレと個室を同系統にして、リビングとは制御を分けました。
リビングより2時間早く動かすためです。
制御は系統別にそれぞれ動かしてもいいのですが、
制御が増えれば、コストがかかるので、
それほど別々に動かす理由もなく、大抵は水周りと、
室内と分ける程度です。

いよいよ次回から工事を紹介します。

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建築家の自邸VOL 33(蓄熱式温水床暖房の設計2)

私のおこなう蓄熱式温水床暖房は、昔からあります。
正確に説明すると、モルタル蓄熱式温水床暖房ということに
なります。はっきりとはいえませんが、おそらく日本の床暖房
は最初こうした方法ではなかったのかと思っています。

私がこの方法を知ったのは、就職した設計事務所がこの方式を
得意としていたからです。
独立後も蓄熱式を提案し続け、床暖房の経験は20年になります。
その間にトラブルになりそうなことを研究し、避ける努力を
してきました。
基本的な構造は変わらないのですが、配管材料、制御方式など、
変化して現在に至っています。

一番変わったのが、配管材料です。
長い間、配管は直径16ミリの銅管でした。これは熱放出率が
良く、ピッチをかえる事で、(寒い地方は15cm間隔、暖かい地
方なら25cm間隔)というように、設計が自由でした。
ただ、工事はかなり慎重におこなわなければならず、(銅管を踏
み潰してしまう可能性がある)溶接など技術が必要で、職人が
限られていました。
5年くらい前に、この銅管が製造中止になり、手に入らなくな
りました。銅管に変わる材料を設備設計の方と相談しました。

代用品として、ポリエチレン管かポリブデン菅がありました。
簡単に言えばどちらもプラスチックです。

両者には特徴がありました。
ポリエチレン管は直径10ミリ(内径約7ミリ)でつなぎの
専用部材があり、連結が容易でした。もう少し細いのが、
パネル式床暖房(床板の間に菅が挟まっている)に使われている、
一般的に普及しているものです。

ポリブデン菅は直径17ミリ(内径約13ミリ)で耐久性に優れ
ていましたが、連結が難しく、硬い材料でした。
工事をするには圧倒的にポリエチレン管のほうが、容易でした。

しかし、私がこだわったのは、菅の太さです。菅が太ければ、
それだけ湯量が多くスムーズに循環し、放熱面積が大きく、
湯の温度も低く抑えられ、菅の耐久性は、飛躍的に上がります。
ボイラーの沸かす湯の温度は燃費にも影響します。
低いほどメリットが大きいのです。

この方式で、もっとも危惧することは、モルタルに埋めてしまう
ことです。一旦埋めてしまったら、トラブルがあったときに
対処が非常に厄介なものになります。
ですから、トラブルの可能性を無くす事が宿命です。

ポリブデン菅は大きな問題点がありました。
それが、つなぎ(連結)が難しいということです。
つなぎが完全じゃないと、そこがトラブルの元になりかねません。

Blg020407











そこで考えたのが、つなぎができないことを逆手に取り、
最初から最後まで一筆書きのように、配管することでした。
そうすれば最大の不安点、つなぎ部分が存在しない配管が
できるのです。
前回で一系統120mと言っていたのは、そのためです。
この材料は全長120mで作られます。これ以上長くなると、
つながなければならないのです。
ですから一系統を120m以内として設計するのです。

皆さんは、一筆書きがどうって事ないと思われるでしょうが、
結構大変なことなのです。そこにノウハウが存在します。

これこそが20年の経験で得られたものです。
次に制御と使い方を説明しましょう。

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建築家の自邸VOL 32(蓄熱式温水床暖房の設計)

先日、床暖房の配管工事がおこなわれました。
床暖房と一口で言っても、いろいろな方式があり、システムに
よっては、効果がまったく違うものになります。

私が床暖房を施す時は、蓄熱式を基本としています。
それは全館暖房(広範囲)が比較的ローコストで工事でき、
しかもイニシャルコスト(燃費)が低く抑えられるからです。

ここまで聞いていると、とてもいいシステムじゃないかと
思われるでしょう。
そうです、使う側にとってはとってもいい暖房だと思っています。
しかし、設計、工事側からすると、とても厄介な物なのです。
ノウハウと手間がかかります。技術も要します。

それほど普及していないのは(最も初期からある方式なのに)
ノウハウを持っている人が少ない事と、現在の家づくりが
乾式で短期間に作る家で、手間がかかるものはあわないから
だと思っています。
床暖房が作る側の論理で進んでいると感じます。

でも、私の家づくりはじっくり設計して、じっくり丁寧に工事
するのが当たり前なので、蓄熱式温水床暖房のシステムを採用
して、工務店が嫌がることはありません。

これから数回にわたって、蓄熱式温水床暖房の工事の様子を
紹介をしていこうと思います。

なぜこれほどまでに蓄熱式にこだわるかというと、
床暖房の本来の目的は、熱源が感じられない自然な暖かさで、
部屋と部屋の温度差がない空間を作ることだと考えています。
居間だけを暖め、廊下やトイレに行ったら急に寒くなり、
温度変化により、お年寄りの体を危険にさらすのが、今までの
住宅暖房でした。

家全体を暖め温度差をなくすことで、お年寄りも不安なく、
快適な暮らしができるのです。これが可能なのが、蓄熱式床暖房
です。この家のように、91の祖母68の母では、必修条件です。
しかも、室内で火を使わないので実に安全です。

システムを知りたい人は、私のHPを覗いてください。

さて、設計から話ししましょう。
広範囲に床暖房できることがわかった時点で、どの部屋を
やるかではなく、どの範囲をやるかという発想になります。
この時に大事なことは、小さい面積より大きな面積ほど、
割安になるという事を忘れないで下さい。

ポイントが5っあります。
①配管は一系統120mまでとなります。大雑把に言えば、
一系統約15畳くらいの範囲です。
②系統の数が工事代金に反映します。極端に言えば面積では
ありません。
③リビングにやるのはもちろんですが、水廻り、廊下をケチって
はいけません。
④お湯を循環させる給湯ボイラーは、灯油、ガス、電気いずれも
かまいませんが、燃費を考慮して選択します。
⑤蓄熱層がモルタルなので、頑固な床基礎の上になります。
つまり、木造の1階部分や、この自邸のように、地下車庫の上や
鉄骨造、RC造の床の上になります。
木造2階木組みの床の上にはできません。
それでも1階全面を行うと、2階も暖かくなります。
ですから、やるなら1階全面を行う方向がベストです。

Blg020107


















自邸を例に挙げると、はじめに添付写真のように、色分け(3色)
の範囲に系統を分けます。それぞれが配管120m以下に抑えられ
ています。渦巻きのようなものが、配管経路です。
一度モルタルに蓄熱させてから、飽和状態になって輻射熱で
床、建物を暖めますので、床面にむらが出ません。

また、設計で重要なのは、配管の循環経路です。
120mの中で行きと帰りでは配管を通るお湯の温度が違います。
当然、最初の熱がモルタルに移って行くのですから、戻る頃には
熱が冷めてきます。行きと帰りの配管が偏らないように設計する
のがポイントです。

渦巻き型は比較的容易にバランスがとれるので、最近はこの形を
多用しています。

制御は系統別に分ける事もありません。制御個数が増えれば、
それだけコストがかかるため。過去のお客さんでも、大抵は
すべて同時に動かしています。
今回は、個室+トイレの一系統(緑色)とその他(ピンクとオレ
ンジ)が別々に制御されます。
どのように運転するのかは次回に説明します。

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